『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』で技術だけに頼らないスキルを身につける

理不尽で、納得し難いことは、働いている中でたくさん出てきます。

この本では、そんなエンジニアとして働く上でのコミュニケーションを事例を通して学ぶことができます。

この本では、エンジニアとして働くための話し方・コミュニケーションと取り方について、具体的な会話事例を通して学ぶことができます。会話のアンチパターンとデザインパターンそれぞれが載っているため、理解しやすい内容になっています。

エンジニアで陥りがちな選択

この本の主人公「田中さん」と同じような状況が自分にもありました。

さて、ここから35歳の田中さんの運命は大きく2つに分かれます。

① 技術力をさらに向上させ、田中さんが言っていることを「あの人が言うなら聞かなきゃいけない」と誰もが納得する「すごい資格」を取るなど権威を手に入れる。

② 話し方を身に付けてから技術力を磨く

90%のエンジニアは、①「すごい技術資格」を選択します。

『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』より

私の経験でも「自分が正しいことを言っているのに、なかなか理解されない」ことが多々ありました。そして、そのときには「もっと技術力をつけて理論で圧倒すれば、周りが納得してくれるだろう」と考えていました。

だけど、いくら技術力が高くて、その意見が正しくても、話し方・伝え方が伴っていないと、相手に理解してもらうことは難しいです。この思考をまず理解する必要があります。正しいと自分が思い込んでしまっていること、正論がすべてじゃないこと。エンジニアで優秀な人ほど、この思考に陥りがちだと思います。

分かれ道に立つ人のイラスト(男性会社員)
技術だけを磨く選択をしない

対話の前に「ラポール」をつくりだす

この本では、対話の前に30秒のラポールというコミュニケーションを取ることをメインに紹介しています。

この方法は、「どちらの出身ですか?」などの「意見が対立しない話題を最初にする」ことです。そして、その話題の中で「私も同じなんです」という同意(ラポール)をつくりだします。これによって、「この人は仲間だ。心を安心して話せる」という状態になります。

ラポールについての説明を読むと「コミュニケーションでよく言われていることと同じでしょ」と最初は思いました。ですが、頭で理解していることと、実際にそれをコミュニケーションで扱えることは違います。

この本ではさまざまな事例を用いて、ラポールのつくり出し方を会話のデザインパターンとして紹介されます。事例を通して学ぶことができます。

世間話をする男性のイラスト
意見が対立しない話を最初に

間違っていても、相手を正さない

例えば、相手が明らかに間違っている場合、どうすればいいでしょうか。

「南極は南だから暖かい」に同意できれば「聞く」ができる!

『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』より

「いやいや、南極は寒いでしょ」というのが正しいです。

正しいですが、それを指摘すると、対立関係が生まれます。かといって、「そうですよね。南極は暖かいですよね」と自分に嘘をついて話を合わせると、自分が苦しくなります。

嘘つきのイラスト
自分に嘘をつかなくてもいい

ラポールを築くためには「同じ」という表明が必要です。しかし、技術的に間違っているものは「そうですね!」と同意できません。必要なのは「嘘をつかずに間違っている意見に同意する方法」です。

どうすればよいでしょうか?

答えは、「なるほど、南極は南だから暖かいと思うのですね!」です。

この返答に「正しい」「間違っている」は入っていません。「相手がそう考えていることは事実」なので、その事実の部分に同意してラポールを築くのです。

これに続く具体的な会話は「なるほど、南極は南だから暖かいと思うのですね」「もしよければ、もう少し詳しく教えていただけませんか?」の手順で「聞く」に入っていきます。

『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』より

どうでしょうか。

正直、自分はこのコミュニケーションはとても難しいと感じました。頭では理解していても、きっととっさには出来ない気もします。でも、実は「南極は暖かいはずがない」という自分の考えの方が間違っている可能性だってあります。相手の考えが間違っていると決めつけずに、聞くという姿勢が大切なんだと思います。相手の間違いを指摘して改善できるのは話している本人だけなのです。なので、聞くことで、その本人に話させて、自分で気づいてもらうしかありません。

上から目線のイラスト(男性)
正論で相手を正さない

まとめ

開発の経験を積むにつれて、コミュニケーションの難しさが徐々にわかってきた気がします。特に経験を積んで「自分が出来る、自分のほうが正しい」と感じるようになってくると、コミュニケーションを取るのが難しくなってくるようにも思います。

この本を通して、改めて話し方の大切さを学ぶことができました。技術力におごらずに、相手を尊重する気持ちと謙虚さを持つことが、最終的な成果により結びつけることができると感じました。